2010/10/16

月が美しい夜に【後書き】

奈良時代の政治家、阿倍仲麻呂作、

天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも

阿倍仲麻呂は唐へと渡り、政治を学んだ後、日本に帰ろうとするも、たどり着けず、大陸で一生を過ごした人です。今でこそ、中国に限らず、世界中どこへ行くにも難破や遭難はめったにないでしょうが、昔は命がけだったんですね。だから、この歌を詠んだときの阿倍仲麻呂の思いというのは、今の感覚では理解できないのかもしれません。

歌の意味としては、「今、眺めている月は日本に出ている月と同じだ」ということなのでしょう。が、個人的な妄想として、同じではないと思うわけです。月を見て複雑な感情がわき上がってくるのか、美しいと感じるのか、はたまた、たこ焼きに見えるのか、それはわかりません、が、今眺めている月は人によって違う風に見えていることは間違いないと思いませんか?

今回は、ある夜、美しい月に対する妖怪達の反応の違いを描くことで、そういった月に対する複雑な思いを託してみました。

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