2011/08/07

アリス、恋のかけら【後書き】

 劇的に再生数が増加した次の話とはどうしてもやりにくいものです。その上にさらに難易度の高いテーマを選んでしまったのですが、別に私がそういうきついのが好きとかそういう嗜好を有しているためではありませんよ。

 本作はアリスの恋、正確には恋というものの芽生えのような心のさざ波を捉えることを目的にして–––そして轟沈した–––作品です。

 アリスはある異変を解決した帰りに、何気なく魔理沙に恋をするのかどうか聞かれます。魔理沙に他意はなく(この辺り、パチェの推理は正しい)、ただ、何となくそんなことを聞いてみただけです。ですが、これをアリスは魔理沙が自分のことを好きで、探りを入れてきたように解釈したわけですね。魔理沙とはつきあいは長いものの、特に恋愛感情、というか「恋」の相手ではなかったわけですが、このとき、静かにスイッチが入ったのです。きっかけはそう、何気ない一言だったんです。あの冒頭の黒地に白文字のコトバはこの物語が終わって(アリスのなかで恋のようなものが終わった後で)から、振り返ってみたときの言葉です。

 アリスはちょっとした勘違いからスタートした恋のかけらを育てることは出来ませんでした。魔理沙から自分(アリス)への「好意」というか恋心が感じられず、自分が感じていたのは単なる魔理沙の心遣いだったことを知ったからです。もちろん、本当に恋しているのであれば、そんなことは関係ないのでしょうが。
 アリスの心に投じられた魔理沙の一言は、さざ波を起こしましたが、それを本当に恋と呼べるかどうか(作中で霊夢や紫はそれを恋と表現していますが)は私には分かりません。それはただ、かけらのようなものではないでしょうか。親しい人のふとした思わせぶりなせりふ(勘違いを含め)で心がざわつく、そういう事がきっとあると思うのです。

アリスは本当に恋すること(相手が誰であれ)が出来るのか、私には分かりません。ただ、今回はアリスの心に恋が目を出すことはなかった、それだけは確かなのかもしれません。

次回は雨をテーマにした小話を考えています。

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